東京外国語大学フェンシング部

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新入生自己紹介⑩

こんにちは!英語科3年の石川雄輝です。自己紹介が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。この春、上智大学国際教養学部から編入学し、鈴木聡先生のゼミで英文学を学んでいます。外大がある府中市の因縁のライバル、調布市出身です。僕はコーヒーが大好きなので、「今日は飛田給まで行く気分じゃない...」という人は、調布駅猿田彦珈琲で一緒に一服しましょう...

さて、メーガンのブログを読んで、スコットランドに行きたくなった皆さん!せっかくなので、もうちょっと西に足をのばしてみませんか。僕は1年間留学していた北アイルランドでフェンシングに出会いました。コールレーンという海に近い田舎町で、羊と牛が「吾輩は...」と威張っているようなところです。ちなみに、Netflixで話題のドラマ、「デリー・ガールズ」は英国(北アイルランド)とアイルランド共和国の国境の町、(ロンドン)デリーが舞台です。こてこての北アイルランド訛りを聞きたい人はぜひ...

羊や牛の肉を食べ過ぎて、すっかり太ってしまった僕は、週に1日だけ、たった2時間の練習なら、「体を動かすにはちょうどいいかな」と思ってフェンシングを始めました。今振り返ってみると、「部活」をしていたとはとても言えませんが、国際色豊かなフェンシング部で、いろいろな国の人と友だちになりました。

「HKG」のメタルジャケットをつけている、香港出身のS君と初めてファイティングしたときは、まだフェンシングを始めて1か月も経っていませんでした。僕は緊張のあまり剣を大きく振り回して、S君をグサグサ刺そうとしていました。
「グサグサっ!」気付いたら、声まで出ていました。
それをスッとかわして、ちょんとトゥシュを決めるS君は、呼吸を乱すことなくマスクを外して、無表情で握手しました。その時僕は、「フェンシングって、めちゃくちゃカッコいいな」と思いました。S君はまさに、寡黙な仕事人でした。

留学生活の終わりも近づき、日本に帰るチケットを買った頃、僕はアイルランド版の全国公に出させてもらいました。「共和国」の首都ダブリンにある名門大学、トリニティ・カレッジが相手だと分かったときも、S君は顔色ひとつ変えませんでした。仕事帰りのOB・OGさんで人数の埋め合わせをしている僕たちの前で、仰々しい赤と黒のジャージを着た軍団がニタニタ笑っていました。
「アイツはいつも剣が残ってるから、それを叩いて思いっきり突くんだ」S君はそう言って、僕の肩をぽんと叩きました。S君は相変わらず無表情でした。
ピストに入って、「よっしゃ、一泡吹かせて...」と思う間もなく、僕は負けてしまいました。

その夜、選手たちはお洒落なスーツやドレスを身にまとって、海辺のホテルに集まっていました。紳士淑女、ディナーを楽しむかと思いきや、ウィスキー片手に酔っぱらい、プリクラでばしゃばしゃ写真を撮って、DJの音楽にあわせて踊り狂っていました。隅っこで突っ立っていた僕は、何もしていないのに疲れてしまって、宴会場の外に逃げ出しました。僕は夜の潮風を体に受けながら、澄ました顔で外階段に座っているS君を見ていました。
「今日はありがとう。全く歯が立たなかったけど。来年は勝てるといいね」
「いや、7月の卒業式が終わったら、香港に帰るつもり。来年はいないよ」
「そうなんだ。こっちで就職するんだと思ってた」
S君は相変わらず無表情でした。またいつかどこかで再会したら、ファイティングすることを約束して、僕たちは波の音よりも静かに乾杯しました。

***

昨年の夏に帰国してから、上智フェンシング部で本格的にフルーレの練習を始めました。自分でアタックまで組み立てて、トゥシュを決める楽しさや、息を切らしながら3分間粘り続けて、最後の1点をいとも簡単に取られる悔しさを知ったのは、日本に帰ってからです。今まで関カレ、アパッチ杯、秋関、北岡杯、そして(外大フェンシング部として)春関に出場しましたが、まだ納得のいく結果は残せていません。それでも、毎回反省点を洗い出し、少しづつ改善できるように努めてきました。目前に迫った全国公では、今まで培ってきたものを全て出し切りたいと思います。

最後に、部長の玄君をはじめ、現役部員の皆さん、OB・OGの皆さん。この春、突然入ってきたのにも関わらず、外大フェンシング部に温かく迎え入れてくださって本当にありがとうございます。少しでも部の結果に貢献できるように頑張りますので、今後ともよろしくお願いします!